ばん馬の成長曲線を考える(第3回)
前回の記事では実績のある種牡馬の馬体重の年度間推移を眺めてみましたが。「じゃあ、一般的なばん馬はどうなんだろう?」ということで、今年度開幕時に級別表に記載のあった6歳以上の馬(牡125頭/セン5頭/牝18頭)を抜き出し、デビューから6歳5月末まで、4年ちょっとの馬体重を集計してみました。ただ、この場合だと一般的なばん馬じゃないかな? 「4シーズン以上現役を続けた優秀なばん馬の平均値」といった方が正しいでしょうか。
前回紹介したインフィニティー他リーディング上位種牡馬の馬体重増加率をグラフにしてみました。
傾向はだいたいこんな感じになりましょうか。
・2歳春から3歳春の1年間で馬体重は1割強増える
・そこから先の曲線は緩やかになる。ただ、ここは個体による差が大きくなるし、そこには飼養環境や馬の体調という要素も加わる
・早い馬は5歳春頃に横ばい、だいたいの馬は6歳春頃まで増加傾向
そして
・「成長」と「鍛錬の成果」の見極めは難しい
なお。対2歳春の増加率で牝馬の方が割合が大きいのは母数が少ないことによる誤差があるのかもしれませんが。その「母数が少ない」原因である人為的な淘汰、つまり牝馬の場合「繁殖に上げる」という選択肢が存在しているので、現役を続けているのはより厳選された競走馬であるから、という要素が大きいんだろうなあ、と考えております。
なお、今回は各年度4~5月馬体重の平均値を採用したわけですが。この時期(特に2歳)はレースに出走していない馬が多くいます。実は今回の集計では出走していない(平均馬体重のない)馬は省いて計算してしまいました。正直、集計方法としては若干いいかげんだよなあと考えております。そもそも、特に2歳は産まれ月による体格差もあるので、より正確な検証をするためにはそこを補正したりもする必要があるのでしょう。無学な血統オタクとしての検証ではこの辺が限界です(泣)
ところで、現役競走馬の馬体重に関する研究としては以下の論文があります。
中堀祐香, 高野直樹, 大江史晃, 齊藤朋子, 萩谷功一 2018
ばんえい競走馬の能力検定後馬体重に関する遺伝率の推定
日本畜産学会報 89(4) 409-414
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikusan/89/4/89_409/_article/-char/ja/
古馬になってからの馬体重や一定期間での馬体重増加量等、キチンとデータを揃えて分析すれば、もっといろいろと分かるのではないかと考えております。
「血統マニア」カテゴリの記事
- ベルジアン種の血統をもっと深く知れるかも(2023.01.19)
- 2020年生まれのばん馬の血統を概観してみる(2023.01.01)
- 2019年生まれのばん馬の血統を概観してみる(2022.01.19)
- 【血統解説】ヤマトタイコー(2021.09.28)
- ばん馬の成長曲線を考える(第3回)(2021.09.18)
Comments