2021年生まれのばん馬の近交係数を概観してみる
先日、2021年生まれの収得賞金上位馬について、5代までに生じたクロスと近交係数を調べてみましたが。それからもうちょっと頑張ってみまして。NARのデータベースに登録されていた2021年生まれのばん馬385頭について、近交係数を簡易的な試算で出してみました(過去4代(5代血統表)での簡易集計なので、厳密に計算した値よりも低めになっています。あくまで参考値です)。
結果はこんな感じ。
5代までにクロスを持たない馬は全体の15%程度。一方、2×3以上のかなり濃いクロスを持つ馬は全体の2%程度でした。
また、このグループ分けした表に能力検査の合格馬・合格率を当てはめてみたのがこちら。
単年度の数字だけで答えを出すのは早計ですが、仮説込みの個人的感想は以下の通り。
・実際に試算する前は近交係数0%(5代までクロス無し)の馬は合格率が良くないと思ってました。理由は「この区分には体格面で劣る純血種だったり、農用馬以外の血が入っている繁殖馬の産駒が入ってくるから」だったのですが。実際には平均越え。個人的にも繰り返し述べている「雑種強勢」の効果が働いているのでは。
・牛などの家畜での近交係数の説明を見ていると 6.25%(2×3) が目安で、ここを越えないような配合を推奨する記述を目にします。今回の結果でも、6.25%を越えると合格率が下がっています。ばん馬も近交係数が6.25%を越える配合は避けた方がよいかもしれませんね(当然、強い近親交配は遺伝性疾患の発現リスクが増大しますし)。
・この集計の結果のみでいえば、3×4や4×4が2本等、ある程度のクロスが馬の能力を高めているように見えます。個人的には、生産者が「種牡馬の能力・資質」と「近親交配のリスク」を勘案して交配相手を選定する。その際、許容できる近親度を 3×4 あるいは 3×3 というあたりに置いている生産者が多いのかな、という推測をしているのですが。いやもしかしたら科学的根拠が見当たらない「奇跡の血量」に、実は「何か」がある可能性も。
「血統マニア」カテゴリの記事
- ばん馬の牝系のルーツをたどってみる(2025.05.07)
- 2022年生まれのばん馬の近交係数を概観してみる(2025.01.25)
- 2021年生まれのばん馬の近交係数を概観してみる(2024.02.23)
- 競走馬の血統情報を遡及的にデータ化してみる(2024.01.07)
- 2021年生まれのばん馬の血統を概観してみる(2024.01.02)
Comments