September 28, 2021

【血統解説】ヤマトタイコー

今回の血統解説は銀河賞で渡来心路騎手と共に重賞初制覇を達成したヤマトタイコー。幕別町西村さんの生産馬です。

http://banei.no.coocan.jp/horse/blood/ymtik_b.html

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父は芯情。純血ペルシュロン種で独立行政法人家畜改良センター十勝牧場の生産馬。純血ペルシュロン種と純血ブルトン種の生産をしています。同牧場で生産された純血ペルシュロン種雄馬の産駒がばんえい競馬の重賞を勝利するのは武潮の産駒である「怪物」サカノタイソンがばんえい記念(2002年2月17日)以来となります。芯情の父はトウカイシンザン(167戦18勝)。帯広市の名門三井牧場の生産馬。同い年同じ牧場生まれのアンローズ(145戦33勝,重賞10勝)との間に産まれたキタノキセキ(337戦30勝)が代表産駒。先日紹介したクマモトヨカバイの2代父でもあります。同馬は現役を引退して家畜改良センター十勝牧場で飼養されております。十勝牧場で供用される種雄馬は同場で産まれた馬、あるいは輸入された馬が多いのですが。ばんえい競馬で競走馬として活躍した馬が十勝牧場で種雄馬として供用されたのは恐らく初めてのはず。芯情はトウカイシンザンの初年度産駒となります。母父はフランスからの輸入種雄馬フアニオン。二代母の父は(先に名の出た)武潮、十勝牧場の生産馬。三代母の父はアメリカからの輸入種雄馬マジエステイツク。ペルシュロン種といえば圧倒的にフランスからの輸入馬が多く、北米大陸産のペルシュロン種雄馬はものすごく珍しいです。
同じ「純血ペルシュロン」でも、さまざまな国、さまざまな牧場で生産された馬がいるわけですが。十勝牧場では、その多様な血統をうまく取り入れながら純血種の育成と品種改良を続けてきたことが、芯情の血統表からうかがい知ることができます。

続いて、母五月。競走馬としての経歴はありません。兄には2011年柏林賞を勝ったタカノテンリュウ(93戦16勝)。他に近親の活躍馬はフナノクン(182戦29勝)、レオユウホー(190戦29勝)など。アメリカからの輸入ベルジアン馬パツシーに、ヒカルタイコー(195戦20勝)→ハマナカキング(239戦35勝)と、西村牧場で飼養している種牡馬を2代続けて交配した血統です。
優れた競走成績を残した馬が種雄馬となるというのは、ばん馬の生産では昭和末期になって主流となったもので、昭和50年代に日本に導入されたベルジアン種の存在も含め、現代的な品種改良といえるでしょう。

改めてヤマトタイコーの血統表を見直してみると。父親は純血ペルシュロンで母親が雑種化の進んだ半血種。いわゆる雑種強勢の効果を期待できる配合です(雑種強勢については以前書いた記事も参照ください)。
また、十勝牧場(国)が培ってきた血統主体の父芯情に対し、民間の個人牧場が独自の力で改良をしてきた母五月と出自も対称的。ヤマトタイコーは「官」と「民」の品種改良技術の結晶といえるのかもしれません。

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August 20, 2021

【血統解説】クマモトイケメン

8月16日にデビューした熊本県産馬のクマモトイケメン。ブチ(栗駁)毛ということでも注目を集めています。

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父は昇龍。熊本県産まれの駁栗毛馬で競走経歴無し。もちろん産駒が競走馬としてデビューするのは初めてとなります。その父伯雲は民間の個人生産が生産したの純血ブルトン種。フランス産のバルジヤンと家畜改良センター十勝牧場産の雲傑の産駒です。昇龍の母朝顔は熊本産の鹿駁毛。その父呂火山は鹿駁毛、こちらも熊本産まれ。勇火山(白糠町産)と呂豊(弟子屈町産)、北海道産まれの両親が熊本に渡って繁殖馬となり、生産された種雄馬です。改めて昇龍の血統を眺めてみますと、雑種化の進んだ繁殖牝馬×純血ブルトン種雄馬という雑種強勢の効果を意識した掛け合わせとなっています。

次は母方の血統を見てみましょう。母は金立、熊本産馬。母父は純血ペルシュロンのブラックヘラクレス。競走馬としての戦績は125戦11勝。馬体重1100Kg超でレースに出走したことも何度もある、恵まれた体格の馬でした。二代母金勝は駁栗毛の熊本産馬。その父金峰山もブチ毛(駁栗毛)、先に名前の出た呂火山の半兄です。母金立も昇龍と同じように、雑種化の進んだ母系に純血種の種雄馬を交配しております。

栗駁毛のクマモトイケメン。父系母系ともにブチ毛の馬がいるわけですが。その遺伝子は金峰山・呂火山の母親である呂豊から受け継いでいるものと思われます。

改めてクマモトイケメンの血統を眺めてみますと。父母ともに北海道産純血種雄馬×熊本産繁殖牝馬の掛け合わせで母父は熊本県産馬となっております。昇龍、金峰山、呂火山はいずれもクマモトイケメンと同じ古閑牧場の生産馬です。
熊本県産馬と北海道産馬、純血種と雑種をうまく組み合わせながら、より大きくより強い馬を生産していく。これぞまさに「農用馬の品種改良」ですよね。
もちろん、競馬場で華々しい成績を挙げた父と母が繁殖馬となって競馬場に子供を送り出すのは「競馬」の大きな魅力の一つですが。他方、クマモトイケメンのような血統の馬が競馬場で活躍するのも「ばんば」の魅力であると、改めて感じております。

クマモトイケメン、活躍してほしいなあ。

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August 16, 2021

【血統解説】クマモトヨカバイ

8月1日に熊本県産まれのばん馬、クマモトヨカバイ号がデビュー。8月16日に出走した2戦目で初勝利を挙げました。九州産馬がばんえい競馬に出走するのは、(遡って調べられた)昭和53年以降では初めて。多分、ばんえい競馬史上初と言ってよいかと思います。そのクマモトヨカバイ号、どんな血統なのでしょうか? ちょっと詳しく見てみましょう。

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クマモトヨカバイ、純血ペルシュロン種です。九州の農用馬はブルトン種が多いという印象があったのですが、近年はばんえい競馬で活躍した馬が種雄馬として熊本に行くケースも結構ありますし、実際に生産された馬の血統を見てみると、日本輓系種(雑種)や純血ペルシュロン種を親に持つ馬が多くなっています。(リンク先)家畜改良データバンク(日本馬事協会)令和2年度に熊本県で血統登録された馬の一覧

父はシンザン竜、釧路市阿寒生まれ。競走馬としてデビューせず、熊本県で種畜検査を受けて種雄馬となっています。二代父はトウカイシンザン(167戦18勝)。帯広市の名門三井牧場の生産馬。同い年同じ牧場生まれのアンローズ(145戦33勝,重賞10勝)との間に産まれたキタノキセキ(337戦30勝)が代表産駒。牝系を見てみると、近しいところでは競走馬として活躍した馬はいませんが、二代母イナノキャップのいとこにはラッキーホマレ(エンジュオウカンエンジュダイヤの母)が。ダービー馬姉妹が一族にいるということで、ポテンシャルは秘めているのではないかと考えております。

母は新梅姫。北海道小清水町で産まれ、競走馬デビューすることなく繁殖入りしています。当初は北海道で初仔を産んでおりますが、その後に熊本に移動、クマモトヨカバイも熊本で産んでいます。母父はシンカザン(189戦19勝)。近親では競走馬として活躍した馬は見当たりません。

ところで。純血ペルシュロン馬の生産牧場としては、家畜改良センター十勝牧場がよく知られておりますが。民間の個人生産者さんにも、純血ペルシュロンの生産をなさっている方が少なからずおります。クマモトヨカバイの血統表にも、トウカイシンザンとその父ジーム(80戦6勝,重賞1勝)、ランタロー(不出走)、シンカザン。民間で生産され、種牡馬となった純血ペルシュロン馬の名前が多く見られます。
北海道の個人生産者の手で生産されたシンザン竜と新梅姫が熊本に渡って繁殖生活を送り、その産駒であるクマモトヨカバイが北海道に渡ってばんえい競馬で活躍している。非常にロマンのある話ではないかと思います。

もちろん「物語」という以外でも、このような流れは好ましいと個人的に感じています。近年、農用馬(ばん馬)の生産頭数や生産者戸数の減少傾向、特定種雄馬への依存度上昇等の影響で、農用馬の血の偏りが懸念されているところです。血の偏りを防ぐためには、生産頭数の増加は当然ですが、より多くの地域で生産されること、繁殖馬の流動性が高まることも重要だと考えます。クマモトヨカバイが活躍することによって、より多くの熊本県産馬が競走馬を目指すようになる。更には、九州のより広い地域で農用馬生産が行われ、ばんえい競馬を目指すようになれば、ばんえい競馬の将来はもっと面白くなるんじゃないか。九州でばんえい競馬の認知度がもっと上がれば、九州でもばん馬大会(草ばん馬)が開かれるかもしれない。
後半は妄想含みですがw クマモトヨカバイが今後更に活躍し、将来的には繁殖馬として民間ペルシュロン主体の血統を繋いでもらえるとうれしいなあ、と思っています。

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March 10, 2010

血統解説(第20回) オレワスゴイ

今回の血統解説は天馬賞で久々の重賞勝ちを果たしたオレワスゴイ。父富士力,母姫花。2005年生まれで浦幌町北村節子氏の生産馬。
父は富士力。自身は競走馬としてデビューすることなく繁殖入りしていますが,ビュウティーニセイ(93黒ユリ賞),ダイヤビュウティー(94白菊賞)と半姉2頭が重賞勝ちを収めています。また近親にはハクマサヒカリ(87農林水産大臣賞典)など。2代父タツリキは純血ペルシュロンの競走経歴馬で通算成績は99戦8勝。
母は姫花で競走経歴なし。オレワスゴイが同馬にとって9頭目の産駒となりますが,兄姉で競走馬登録された6頭のうち5頭が能力検定を合格しています。その他近親では目立った活躍馬は見られません。母父アイスリヤルは142戦20勝で重賞2勝。昭和の大種雄馬富士の直仔でhttp://homepage1.nifty.com/riki-midori/horse/ebtsy.htmlの父になります。

オレワスゴイの5代血統表
富士の3×3のインブリードがあります。祖先に純血ブルトンの父×半血馬の母を掛け合わせた馬が多く入っており,非常に面白いですね。ベルジャンの血は入っておらず,全体的に見ても非主流系の種雄馬が目につく異系の血脈となっています。

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February 19, 2010

血統解説(第19回) ホクショウバトル

すいません,すっかり更新が滞ってしまいました。久々の血統解説はヤングチャンピオンシップ勝ちのホクショウバトル。2007年4月8日生まれ。父インディボクサー母風乃亜美,本別町風間進氏の生産馬。

父はインディボクサー。1996年生まれということはスーパーペガサス等と同年齢。通算成績は197戦23勝で重賞への出走経験はなし。半兄にニュートリノ(166戦21勝),近親にスーパーペガサスがいる血統背景や繁殖牝馬の多い十勝で供用されていたこともあり,初年度から多くの産駒に恵まれました。ホクショウバトルはウィナーミミに続く2頭目の重賞ウィナー。インディボクサーは既に亡くなっておりまして,現3歳馬が最後の世代。早逝が惜しまれます。2代父ダイヤテンリユウは71戦29勝で重賞10勝,ニセコクインヨウテイクインの兄,種雄馬としてもサダエリコハイトップレディをはじめ多くの活躍馬を出した,ばんえい競馬史上屈指の名馬。

母は風乃亜美で,恐らく競走馬としては登録されていないと思います。ブルーストーン,キタノユリヤーと,近い兄姉は競走馬としてデビューしていますが,それより前に生まれた5頭の産駒は競走馬としては登録されていない模様。近親にも目立った活躍馬がいない,どちらかといえば地味な牝系といえます。母の父シマノカチクリは185戦24勝,あのミサキテンリュウの父ですね。

ホクショウバトルの5代血統表
ジアンデユマレイ(ベルジャン),鉄鯉(ブルトン),二世ロッシーニ(ペルシュロン)と,それぞれの品種を代表する大種雄馬のインブリードを持っています。計算された配合なのか偶然なのかは寡聞につき判断しづらいところですが,非常に興味深い血統です。

いわゆる「インブリード」がばん馬の競走能力にどのような影響を与えるのかについては,これまであまり議論されてこなかった(そもそもばんえいの競走馬の血統に関する議論自体が為されていない)わけですが。ペルブルベルジ3種の大種雄馬のインブリードを持つホクショウバトルの今後の活躍で,このへんの議論が活発になると面白いかなと思いますし,ばんえい競馬の競走馬の血統自体に注目する人が増えてくるとうれしいなと思います。

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November 12, 2009

血統解説(第18回) ユーファンタジー

今回の血統解説はクインカップで重賞初制覇を達成したユーファンタジー。2005年生まれ。父ヤマノカイリキ母ツジノファンタジー。厚沢部町辻口愛子氏の生産馬。

父はヤマノカイリキ。通算成績は193戦30勝。重賞競走への出走経験はなかったものの,3~4歳(旧表記)時には世代限定一番手のレースに度々出ていました。古馬になってからは条件戦を中心に出走し,2004年2月に明け10歳で登録を抹消,繁殖入りしました。2005~06年と2世代の産駒を出しましたが,競走馬登録されて能力検定に合格したのはユーファンタジー1頭のみとなっています。二代父エゾフジは通算68戦4勝ですが,兄にスーパージヤンデイ(155戦29勝),妹ジユリアン(不出走)はライデンロックの祖母で「ライデン軍団」の基幹繁殖牝馬というべき1頭です。
母ツジノファンタジーは2000年生まれで競走経歴なしですが,シンザンウィーク(216戦28勝)の全妹です。この系統の活躍馬は他にハイランドレディ(136戦17勝,黒ユリ賞4着)あたり。

ユーファンタジーの5代血統表
ジアンデユマレイと二世ロッシーニのクロスが目立ちますね。血統表を見た感じはブルトンの影響が少ないこともあって,晩成型のようにも感じられますが。

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October 22, 2009

血統解説(特別編) 全道祭典ばんば1歳馬決勝大会出走馬

今週末は全道祭典ばんば1歳馬決勝大会が行われます。
そこで出走各馬について血統解説を簡単に。

○雌馬の部

カワラヒメ
父スターシンザンは209戦15勝,この世代が2世代目の産駒。母ロッキートップは不出走。2代母の北富士姫はビュウティーニセイ(93黒ユリ賞),ダイヤビュウティー(94白菊賞),富士力(オレワスゴイの父)の姉にあたります。

プリンセスハナヤヨイ
父は3歳三冠馬のウンカイ。母プリンセスヒメコは54戦4勝でニシキガールプリンセスサクラコの姉。「良血」という言葉でいえばメンバー中随一ですね。当然プリンセスハナヤヨイという名前では競走馬登録はできませんが,春にはホクショウ○○○○の名前で能検に出てくるんじゃないかと予想しておきます(w

フジヒメ
父ヒロノツヨシは198戦19勝,今のところ2世代が競走馬デビューしていますが今のところ目立った産駒はなし。母フジノビックヒメは23戦1勝。近親には活躍馬は見当たりません。

テルミユー
兄のサムライキングとシンザンテンリュウが競走馬デビューしています父ユウシンコマは181戦33勝,テルミユーが8世代目の産駒となります。母清姫は競走登録無。

ホウザン
先日の白菊賞で5着に入ったヒカルワンダーの妹。他にも姉ヒカルギンガ,兄メオトフロンテアが現役。父はマルニエーカン(171戦32勝,重賞2勝)で,この世代が3代目となります。母レオナチャンプは不出走ですがキタノビッグエースの妹。

メイビ
姉にキタノスズラン,キタノラン(いずれも現役)がいます。父ヒカルイットウセイは131戦17勝でこの世代が初年度産駒。母アオノエンゼルは24戦2勝。近親に活躍馬は見当たりません。

タムラシャネル
姉にアキトクィーン(現役)。父ニシキロードは108戦11勝でこの世代が初年度産駒。母ウイナーエンジェルは不出走。近親の活躍馬はグレートブレーブ(94戦9勝)あたり。


○雄馬の部

タイヨウ
シベチャタイガー,ホクトタイガー,キタノオーロラの全弟ですね。父カツテンオウは192戦21勝。母ユキナミトップは47戦3勝。近親にマコトキング(142戦11勝)など。

クリマル
マルニエーカンは前述。初年度は函館で供用されていたのですがその後滝上に移動しました。これから活躍馬も増えてくるんじゃないかと思います。母センリュウオーカンは20戦1勝。近親に活躍馬は見当たりません。

レッドフジ
今年のばんえい大賞典2着アアモンドヤマトの全弟になります。父カミカゼマンは72戦12勝。主な産駒はアアモンドヤマトの他にヨコハマイサムなど。レッドフジが10世代目の産駒となります。母ホウセキヒメは不出走。2代母ホウセンは競走経歴馬で111戦して17勝の成績。

キンリキ
父ヒカルイットウセイは前述。母の金姫は競走馬登録しておりません。近親に目立った活躍馬は見当たりません。

ファーストクラス
父ヒロノツヨシは前述。母ブルリリは不出走で,(当時の)連勝記録を作ったウィニングの好敵手ホクショータイガー(39戦17勝)の妹。

リードアトム
全姉にニシキレディー(22戦1勝)。父はリーディングサイアーコーネルトップ(139戦31勝,重賞8勝)。この世代が最後の産駒となります。母マコトセンショウ(不出走)はフジノキリンオー(201戦30勝)の妹にあたります。

クマイシボーイ
父ハイパービートは205戦24勝,熊石で供用されていてこの世代が初年度産駒。母クマイシホマレ。近親に目立った活躍馬は見当たりません。

ミスターコイ
全姉ヒメウンカイ,半兄キンショウザン。父ウンカイは前述。母の愛はイダテンオー(139戦9勝)の妹。

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October 13, 2009

血統解説(第17回) テンマデトドケ

今回の血統解説はナナカマド賞を勝ったテンマデトドケ。2007年生まれで父キタノキング母北海山波。池田町坂東孝一氏の生産馬。

父はキタノキング。1995年生まれはハイトップレディ等と同世代。3歳時は目立つ存在ではなかったものの4歳になってから頭角を現し,ダービー2着に続いて菊花賞で重賞初制覇。5歳時には銀河賞,ポプラ賞を制して世代限定戦後半の主役となった馬です。ただ,古馬になってからは2戦しただけで長期休養入り。その後レースに復帰すること無く繁殖入りしました。通算成績は51戦16勝。まともに走っていたらもっと素晴らしい成績を残していたかもしれない,隠れた名馬といえるでしょう。2代父キングスターは競走経歴はありませんが,兄にマルトセンシヨー(カワシルバー等の父),ロングボーイ(重賞2勝),チカラトウシヨウ(重賞4勝)をもつ良血馬。キタノキング以外にもヨシノタロウ(250戦25勝)やサンライズ(123戦24勝)等を輩出しています。
母北海山波で競走経歴は無し。テンマデトドケの兄ダイヤノカガヤキ,姉キタノハヤカゼと競走馬デビューを果たしています。近親には北海山波からみておじにダイユーザン(181戦19勝)。その父はホツカイリユウ,通算成績171戦13勝。

テンマデトドケの5代血統表
ジアンデユマレイのクロスが目立ちます。全体的には他馬に比べてベルジアンが多めでペルシュロン分が多少少なめという印象でしょうか。キングスターの父朝姫やホツカイリユウの父富士など,雑種化の進んだ繁殖牝馬に純血種雄馬という組み合わせの馬が血統表のあちこちに見られます。明治以来,日本では在来の繁殖牝馬に海外から輸入した種雄馬を配合して馬格の改良に取り組んできたという歴史があるわけですが。その流れは昭和40~50年代においても続いていたのが垣間見られるようで,眺めていてなかなか味わい深い血統表だなと思います(笑)

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October 08, 2009

血統解説(第16回) ワタシハキレイズキ

今回の血統解説はばんえいプリンセス賞で重賞初制覇を挙げたワタシハキレイズキ。父シャトルシンザン,母誉花。広尾町岩岡昇氏の生産馬。

父はシャトルシンザン。1992年生まれでアキバオーショウやグレイトジャイナーと同世代。4歳時にダービー,はまなす賞,菊花賞を制覇して名を挙げた馬ですが,古馬になってからはあまり成績は振るいませんでした。通算成績は116戦28勝と10歳まで現役を続けた割りにはちょっと少ない出走数で,順調に使えなかった事情があったのかもしれません。引退後は大樹町で種雄馬として供用。正直なところ産駒の数にはそれほど恵まれませんでしたが,今回見事重賞サイアーとなりました。なお,産駒は現2歳が最後の世代となりますが,2歳馬で競走登録をされた馬はいないようなので,実質現3歳勢が最後の世代となります。その父はキタノシンザンで1984年産まれ。弟に「無冠の名馬」ヒカルシンザン。通産成績は69戦23勝,重賞競走での活躍はないもののなかなかの成績で,実質4シーズンを現役で過ごした後に繁殖入り。残した4世代の産駒からシャトルシンザン以外にもキタノソウシ等を輩出し,また母の父としてミサキスーパー,アオノキセキ,サクラガール,エビステンショウと4頭の重賞勝ち馬を出しています。
母は誉花で競走経歴は無し。純血ベルジアンの父マルゼンバージとペルシュロン主体の半血馬誉姫と対照的な掛け合わせの配合は,いわゆる雑種強勢が出る組み合わせなんじゃないかと思います。実はこの牝系は競走馬が全然出ておらず,ワタシハキレイズキの兄弟も今のところ競走登録された馬はいないのですが,ワタシハキレイズキの活躍で下の世代も競走馬になってもらえると面白いんじゃないかと思います。

ワタシハキレイズキの5代血統表
父シャトルシンザン自体が二世ロッシーニのクロスを持っている他,純血ベルジアンM.V.F. Rodneyのクロスも入っています。ともに1978生まれのロドニースジヨイジエーとヂアンスジユルですが,同じ牧場から購入したんでしょうかね? なかなか興味深いです。血統構成的にはブルトンの血からかなり遠ざかった配合です。父シャトルシンザンの競走成績から早熟なんじゃないかと考えたりしますが,血統表を眺めた感じでは決して早熟ではないような。シャトルシンザンも1100Kgを超える大型馬でしたし,まだ成長の余地は十分にあろうかと。今後の活躍が楽しみです。

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September 16, 2009

血統解説(第15回) アカダケキング

今回の血統解説は銀河賞を制したアカダケキング。父アジアテンリュウ,母森姫。中標津町伊藤速氏の生産馬。

父はアジアテンリュウ。1990年生まれで現役時代の成績は42戦2勝。正直言ってあまり目立たない成績でした。2シーズン走ったところで繁殖入りしています。ただ,弟にヨシノロイヤル(198戦22勝),おじにホッカイハヤテ(120戦18勝,種雄馬)と,血統的にはそれなり実績のある系統。繁殖入りしてからも競走登録されている産駒はそれほど多くありませんが,能力検定の合格率はなかなかのもので,このへんは仕上がりの早いブルトン系の父タカラユーホ(157戦14勝)の影響が出ているのかなと思います。アカダケキングが11世代目にして初の重賞勝ち馬となりました。
母はペルシュロン系の森姫。アカダケキングの兄弟で競走馬デビューを果たせた馬はいません。祖母エスカイイヤースミスジユデイは輸入牝馬ですが,名前を見た感じフランスではなく北米産ではないかと思います。近親はアカダケキングからみておじにネムロウンリユウ,いとこにアサイシャード(180戦15勝),いとこの仔にクレシェンドスター(116戦18勝)あたり。

アカダケキングの5代血統表。ペルシュロン系の肌にペルシュロンの影響が少ないアジアテンリュウという組み合わせは雑種強勢を活かした配合ですね。父母ともに高齢の組み合わせということもあり,今の4歳馬としてはちょっと珍しいクラシカルな血統といえるかと。

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