【血統解説】ヤマトタイコー
今回の血統解説は銀河賞で渡来心路騎手と共に重賞初制覇を達成したヤマトタイコー。幕別町西村さんの生産馬です。
http://banei.no.coocan.jp/horse/blood/ymtik_b.html
父は芯情。純血ペルシュロン種で独立行政法人家畜改良センター十勝牧場の生産馬。純血ペルシュロン種と純血ブルトン種の生産をしています。同牧場で生産された純血ペルシュロン種雄馬の産駒がばんえい競馬の重賞を勝利するのは武潮の産駒である「怪物」サカノタイソンがばんえい記念(2002年2月17日)以来となります。芯情の父はトウカイシンザン(167戦18勝)。帯広市の名門三井牧場の生産馬。同い年同じ牧場生まれのアンローズ(145戦33勝,重賞10勝)との間に産まれたキタノキセキ(337戦30勝)が代表産駒。先日紹介したクマモトヨカバイの2代父でもあります。同馬は現役を引退して家畜改良センター十勝牧場で飼養されております。十勝牧場で供用される種雄馬は同場で産まれた馬、あるいは輸入された馬が多いのですが。ばんえい競馬で競走馬として活躍した馬が十勝牧場で種雄馬として供用されたのは恐らく初めてのはず。芯情はトウカイシンザンの初年度産駒となります。母父はフランスからの輸入種雄馬フアニオン。二代母の父は(先に名の出た)武潮、十勝牧場の生産馬。三代母の父はアメリカからの輸入種雄馬マジエステイツク。ペルシュロン種といえば圧倒的にフランスからの輸入馬が多く、北米大陸産のペルシュロン種雄馬はものすごく珍しいです。
同じ「純血ペルシュロン」でも、さまざまな国、さまざまな牧場で生産された馬がいるわけですが。十勝牧場では、その多様な血統をうまく取り入れながら純血種の育成と品種改良を続けてきたことが、芯情の血統表からうかがい知ることができます。
続いて、母五月。競走馬としての経歴はありません。兄には2011年柏林賞を勝ったタカノテンリュウ(93戦16勝)。他に近親の活躍馬はフナノクン(182戦29勝)、レオユウホー(190戦29勝)など。アメリカからの輸入ベルジアン馬パツシーに、ヒカルタイコー(195戦20勝)→ハマナカキング(239戦35勝)と、西村牧場で飼養している種牡馬を2代続けて交配した血統です。
優れた競走成績を残した馬が種雄馬となるというのは、ばん馬の生産では昭和末期になって主流となったもので、昭和50年代に日本に導入されたベルジアン種の存在も含め、現代的な品種改良といえるでしょう。
改めてヤマトタイコーの血統表を見直してみると。父親は純血ペルシュロンで母親が雑種化の進んだ半血種。いわゆる雑種強勢の効果を期待できる配合です(雑種強勢については以前書いた記事も参照ください)。
また、十勝牧場(国)が培ってきた血統主体の父芯情に対し、民間の個人牧場が独自の力で改良をしてきた母五月と出自も対称的。ヤマトタイコーは「官」と「民」の品種改良技術の結晶といえるのかもしれません。