January 19, 2023

ベルジアン種の血統をもっと深く知れるかも

かれこれ1年ほど前になりましょうか。あれこれ調べ物をしている最中、とあるWebサイトに辿り着きました。
https://belgianregistry.com
"Belgian Draft Horse Corpoation of America"のWebサイトで、オンライン上で馬の登録ができ、血統の遡りも可能。
思いつく馬名を入れてみる
ジアンデユマレイ
マルゼンストロングホース
当然ながらヒットする。すげーぜ。

長年知りたかったマルゼンバージの母ヂアンスジユルの原綴りが"Jan's Jewel"であることも判明する。すげーぜすげーぜ。
うれしくってTwitterに投稿までしてしまってました。

https://twitter.com/baneishiryokan/status/1484523506205626369

海外(特に米国)の馬の血統を調べられるサイトといえば、https://www.allbreedpedigree.com は知っており、前々から使っておりました。ただ、マルゼンストロングホースと思しき馬が2件登録されていたりして。 STRONG HORSE SUTORONGUHOSU

データの信頼度という点ではもう一声かなあ、という感想を持っておりました。

今回の belgianregistry.com はデータの信頼度も高そうだということで、拙サイト重種馬名鑑に載せている5代血統表に関しても、このサイトで調べた情報を反映させていこうかと思っているところです。まずはマルゼンバージの5代血統表
拙サイト
http://banei.no.coocan.jp/horse/blood/mrzvg_b.html
馬関連団体情報(日本馬事協会)
https://www.bajikyo.or.jp/renkei.php?pageno=206&assoc=1&hno=16101%200934

これから少しずつ、いろいろな馬の血統表を更新していきたいと考えております。

「これまで不明だった血統表の先祖が埋まる」という事は、「マニア的な喜ばしさ」という意味での単純なうれしさ、というのは当然あるのですが。

先祖の情報がキチンと分かっていればそれだけ、近交係数の計算をした際に「より正確に近い数値」を導き出せる。
血の偏りが懸念されている日本輓系種の生産現場で役立てられる情報が提供できるかもしれないぞ。と、自分勝手に満足している今日このごろでございます。

| | Comments (0)

January 01, 2023

2020年生まれのばん馬の血統を概観してみる

ばん馬の血統は寡占化が進んでいる、というのはよく言われることですが。じゃあ、今のばん馬はどれぐらいの近親交配があるのでしょうう?

ということで、差し当たり2020年生まれの明け3歳馬の賞金上位20頭(2022年12月30日時点)について、5代までに生じたクロスを調べてみました。
01_20230101142701
02_20230101142701
なお、昨年にも同じことをやっておりますので、あわせてご笑覧いただければ幸いです。

| | Comments (0)

January 19, 2022

2019年生まれのばん馬の血統を概観してみる


ばん馬の血統は寡占化が進んでいる、というのはよく言われることですが。じゃあ、今のばん馬はどれぐらいの近親交配があるのでしょうう?
ということで、差し当たり2019年生まれの明け3歳馬の賞金上位20頭(2022年1月14日時点)について、5代までに生じたクロスを調べてみました。
01_20220119211601
02_20220119211601

| | Comments (0)

September 28, 2021

【血統解説】ヤマトタイコー

今回の血統解説は銀河賞で渡来心路騎手と共に重賞初制覇を達成したヤマトタイコー。幕別町西村さんの生産馬です。

http://banei.no.coocan.jp/horse/blood/ymtik_b.html

Ws000000

父は芯情。純血ペルシュロン種で独立行政法人家畜改良センター十勝牧場の生産馬。純血ペルシュロン種と純血ブルトン種の生産をしています。同牧場で生産された純血ペルシュロン種雄馬の産駒がばんえい競馬の重賞を勝利するのは武潮の産駒である「怪物」サカノタイソンがばんえい記念(2002年2月17日)以来となります。芯情の父はトウカイシンザン(167戦18勝)。帯広市の名門三井牧場の生産馬。同い年同じ牧場生まれのアンローズ(145戦33勝,重賞10勝)との間に産まれたキタノキセキ(337戦30勝)が代表産駒。先日紹介したクマモトヨカバイの2代父でもあります。同馬は現役を引退して家畜改良センター十勝牧場で飼養されております。十勝牧場で供用される種雄馬は同場で産まれた馬、あるいは輸入された馬が多いのですが。ばんえい競馬で競走馬として活躍した馬が十勝牧場で種雄馬として供用されたのは恐らく初めてのはず。芯情はトウカイシンザンの初年度産駒となります。母父はフランスからの輸入種雄馬フアニオン。二代母の父は(先に名の出た)武潮、十勝牧場の生産馬。三代母の父はアメリカからの輸入種雄馬マジエステイツク。ペルシュロン種といえば圧倒的にフランスからの輸入馬が多く、北米大陸産のペルシュロン種雄馬はものすごく珍しいです。
同じ「純血ペルシュロン」でも、さまざまな国、さまざまな牧場で生産された馬がいるわけですが。十勝牧場では、その多様な血統をうまく取り入れながら純血種の育成と品種改良を続けてきたことが、芯情の血統表からうかがい知ることができます。

続いて、母五月。競走馬としての経歴はありません。兄には2011年柏林賞を勝ったタカノテンリュウ(93戦16勝)。他に近親の活躍馬はフナノクン(182戦29勝)、レオユウホー(190戦29勝)など。アメリカからの輸入ベルジアン馬パツシーに、ヒカルタイコー(195戦20勝)→ハマナカキング(239戦35勝)と、西村牧場で飼養している種牡馬を2代続けて交配した血統です。
優れた競走成績を残した馬が種雄馬となるというのは、ばん馬の生産では昭和末期になって主流となったもので、昭和50年代に日本に導入されたベルジアン種の存在も含め、現代的な品種改良といえるでしょう。

改めてヤマトタイコーの血統表を見直してみると。父親は純血ペルシュロンで母親が雑種化の進んだ半血種。いわゆる雑種強勢の効果を期待できる配合です(雑種強勢については以前書いた記事も参照ください)。
また、十勝牧場(国)が培ってきた血統主体の父芯情に対し、民間の個人牧場が独自の力で改良をしてきた母五月と出自も対称的。ヤマトタイコーは「官」と「民」の品種改良技術の結晶といえるのかもしれません。

| | Comments (0)

September 18, 2021

ばん馬の成長曲線を考える(第3回)

前回の記事では実績のある種牡馬の馬体重の年度間推移を眺めてみましたが。「じゃあ、一般的なばん馬はどうなんだろう?」ということで、今年度開幕時に級別表に記載のあった6歳以上の馬(牡125頭/セン5頭/牝18頭)を抜き出し、デビューから6歳5月末まで、4年ちょっとの馬体重を集計してみました。ただ、この場合だと一般的なばん馬じゃないかな? 「4シーズン以上現役を続けた優秀なばん馬の平均値」といった方が正しいでしょうか。

01_20210918115801 02_20210918115901

前回紹介したインフィニティー他リーディング上位種牡馬の馬体重増加率をグラフにしてみました。

1_20210918120201

傾向はだいたいこんな感じになりましょうか。

・2歳春から3歳春の1年間で馬体重は1割強増える
・そこから先の曲線は緩やかになる。ただ、ここは個体による差が大きくなるし、そこには飼養環境や馬の体調という要素も加わる
・早い馬は5歳春頃に横ばい、だいたいの馬は6歳春頃まで増加傾向

そして
・「成長」と「鍛錬の成果」の見極めは難しい

なお。対2歳春の増加率で牝馬の方が割合が大きいのは母数が少ないことによる誤差があるのかもしれませんが。その「母数が少ない」原因である人為的な淘汰、つまり牝馬の場合「繁殖に上げる」という選択肢が存在しているので、現役を続けているのはより厳選された競走馬であるから、という要素が大きいんだろうなあ、と考えております。


なお、今回は各年度4~5月馬体重の平均値を採用したわけですが。この時期(特に2歳)はレースに出走していない馬が多くいます。実は今回の集計では出走していない(平均馬体重のない)馬は省いて計算してしまいました。正直、集計方法としては若干いいかげんだよなあと考えております。そもそも、特に2歳は産まれ月による体格差もあるので、より正確な検証をするためにはそこを補正したりもする必要があるのでしょう。無学な血統オタクとしての検証ではこの辺が限界です(泣)

ところで、現役競走馬の馬体重に関する研究としては以下の論文があります。

中堀祐香, 高野直樹, 大江史晃, 齊藤朋子, 萩谷功一 2018
ばんえい競走馬の能力検定後馬体重に関する遺伝率の推定
日本畜産学会報 89(4) 409-414
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikusan/89/4/89_409/_article/-char/ja/

古馬になってからの馬体重や一定期間での馬体重増加量等、キチンとデータを揃えて分析すれば、もっといろいろと分かるのではないかと考えております。

| | Comments (0)

September 09, 2021

ばん馬の成長曲線を考える(第2回)

前回はインフィニティーの成長曲線を紹介しましたが。
今回は今年8月末時点での種雄馬成績上位5頭について、現役時代の馬体重推移をまとめてみました。

01_20210909205501

馬体重の変化は飼養環境や馬の健康状態の影響も大きいので、どこまでが「成長」なのかは判断つきにくいのですが、結果はこんな感じ。
また、各年の4-5月平均馬体重を抜き出してグラフ化したものがこちら。

1
サラブレッドは4歳夏~秋までは馬体重は増加するとのこと(https://company.jra.jp/equinst/magazine/pdf/71-2019-5.pdf)。ばん馬の場合、季節要因で冬場は馬体重が増える傾向ですので「4歳冬ぐらいまで増加するのが標準」と仮定義しておきます。
とすると、

・インフィニティー 超晩成
・カネサブラック  普通
・カネサテンリュウ 普通
・ナリタボブサップ 晩成
・ウンカイ     普通

って感じになりましょうか。

| | Comments (0)

September 06, 2021

ばん馬の成長曲線を考える(第1回)

インフィニティー号が死亡したというニュースがありました(https://banei-keiba.or.jp/tp_detail.php?id=6461)。
引退後は種牡馬となり、今年3世代目の産駒がデビュー。重賞勝ち馬こそ出てはいませんが産駒の評判はすごくよかったし、稀代の名繁殖牝馬クインフェアーの血脈をもっと多くの馬に伝えてほしかったです。本当に早逝が惜しまれます。

インフィニティー。改めて成績を見直してみると、デビュー戦(4月26日)での馬体重は804Kgだったんですね。重賞初出走は7歳のばんえい十勝オッズパーク杯。同年度の北斗賞で重賞初制覇、同年度末にはばんえい記念初挑戦で勝利を飾りました。インフィニティーの馬体重の推移をまとめてみましたのが下の表とグラフ。

 

01_20210906214101

 

2

 

 

いやいや、すごいです。8歳ぐらいまで順調に増え続けています。ウマの成長ですが、サラブレッドの場合はだいたい4歳の夏~秋ごろまで成長するらしいです(https://company.jra.jp/equinst/magazine/pdf/71-2019-5.pdf)。ばん馬の場合、同じあるいはもうちょっと遅いかなあという印象はありますが。インフィニティーのように8歳まで上昇傾向が続くのはかなり珍しいんじゃないかと思います。


ところで。インフィニティーの成長曲線。産駒にも受け継がれてるものなんでしょうか? 最終的な馬格や体型は当然遺伝要素はあるんでしょうけど。成長曲線も遺伝するんでしょうか? ていうか、先に述べた一般的なばん馬の成長曲線も「同じあるいはちょっと遅い」というのは単なる印象論。恥ずかしながら、キチンとした数字って見たことないんですよね。

自分、ばん馬のこと、まだまだ知らないことだらけだなあ。
というわけで、この「馬の成長曲線」についてはこのブログであれこれ検証してみることにします。

--(20210907追記)-----------------------------------------

ばん馬(農用馬)の成長曲線。この論文の存在をすっかり忘れてました。「恥ずかしながら、キチンとした数字って見たことないんですよね」じゃないよ。勉強不足ですよ、自分。

増田豊, 久保喜広, 山下大輔, 柏村文郎, 鈴木三義 2014
農用馬の体重ならびに体尺測定値に関する異なる成長段階における遺伝的パラメータの推定
日本畜産学会報 85(1) 1-12
https://doi.org/10.2508/chikusan.85.1

この論文によれば、
・体重や体尺の遺伝率は中程度以上と高い
・体重の成熟速度には遺伝的な個体差が存在することを示唆

とあります。競走馬として活躍した父親・母親の馬体重推移から、産駒の成長曲線を予想することはある程度できそうです。あれこれ足し算と割り算をしてみましょうか。

| | Comments (0)

August 20, 2021

【血統解説】クマモトイケメン

8月16日にデビューした熊本県産馬のクマモトイケメン。ブチ(栗駁)毛ということでも注目を集めています。

01_20210820211601

父は昇龍。熊本県産まれの駁栗毛馬で競走経歴無し。もちろん産駒が競走馬としてデビューするのは初めてとなります。その父伯雲は民間の個人生産が生産したの純血ブルトン種。フランス産のバルジヤンと家畜改良センター十勝牧場産の雲傑の産駒です。昇龍の母朝顔は熊本産の鹿駁毛。その父呂火山は鹿駁毛、こちらも熊本産まれ。勇火山(白糠町産)と呂豊(弟子屈町産)、北海道産まれの両親が熊本に渡って繁殖馬となり、生産された種雄馬です。改めて昇龍の血統を眺めてみますと、雑種化の進んだ繁殖牝馬×純血ブルトン種雄馬という雑種強勢の効果を意識した掛け合わせとなっています。

次は母方の血統を見てみましょう。母は金立、熊本産馬。母父は純血ペルシュロンのブラックヘラクレス。競走馬としての戦績は125戦11勝。馬体重1100Kg超でレースに出走したことも何度もある、恵まれた体格の馬でした。二代母金勝は駁栗毛の熊本産馬。その父金峰山もブチ毛(駁栗毛)、先に名前の出た呂火山の半兄です。母金立も昇龍と同じように、雑種化の進んだ母系に純血種の種雄馬を交配しております。

栗駁毛のクマモトイケメン。父系母系ともにブチ毛の馬がいるわけですが。その遺伝子は金峰山・呂火山の母親である呂豊から受け継いでいるものと思われます。

改めてクマモトイケメンの血統を眺めてみますと。父母ともに北海道産純血種雄馬×熊本産繁殖牝馬の掛け合わせで母父は熊本県産馬となっております。昇龍、金峰山、呂火山はいずれもクマモトイケメンと同じ古閑牧場の生産馬です。
熊本県産馬と北海道産馬、純血種と雑種をうまく組み合わせながら、より大きくより強い馬を生産していく。これぞまさに「農用馬の品種改良」ですよね。
もちろん、競馬場で華々しい成績を挙げた父と母が繁殖馬となって競馬場に子供を送り出すのは「競馬」の大きな魅力の一つですが。他方、クマモトイケメンのような血統の馬が競馬場で活躍するのも「ばんば」の魅力であると、改めて感じております。

クマモトイケメン、活躍してほしいなあ。

| | Comments (0)

August 16, 2021

【血統解説】クマモトヨカバイ

8月1日に熊本県産まれのばん馬、クマモトヨカバイ号がデビュー。8月16日に出走した2戦目で初勝利を挙げました。九州産馬がばんえい競馬に出走するのは、(遡って調べられた)昭和53年以降では初めて。多分、ばんえい競馬史上初と言ってよいかと思います。そのクマモトヨカバイ号、どんな血統なのでしょうか? ちょっと詳しく見てみましょう。

01_20210816215101

クマモトヨカバイ、純血ペルシュロン種です。九州の農用馬はブルトン種が多いという印象があったのですが、近年はばんえい競馬で活躍した馬が種雄馬として熊本に行くケースも結構ありますし、実際に生産された馬の血統を見てみると、日本輓系種(雑種)や純血ペルシュロン種を親に持つ馬が多くなっています。(リンク先)家畜改良データバンク(日本馬事協会)令和2年度に熊本県で血統登録された馬の一覧

父はシンザン竜、釧路市阿寒生まれ。競走馬としてデビューせず、熊本県で種畜検査を受けて種雄馬となっています。二代父はトウカイシンザン(167戦18勝)。帯広市の名門三井牧場の生産馬。同い年同じ牧場生まれのアンローズ(145戦33勝,重賞10勝)との間に産まれたキタノキセキ(337戦30勝)が代表産駒。牝系を見てみると、近しいところでは競走馬として活躍した馬はいませんが、二代母イナノキャップのいとこにはラッキーホマレ(エンジュオウカンエンジュダイヤの母)が。ダービー馬姉妹が一族にいるということで、ポテンシャルは秘めているのではないかと考えております。

母は新梅姫。北海道小清水町で産まれ、競走馬デビューすることなく繁殖入りしています。当初は北海道で初仔を産んでおりますが、その後に熊本に移動、クマモトヨカバイも熊本で産んでいます。母父はシンカザン(189戦19勝)。近親では競走馬として活躍した馬は見当たりません。

ところで。純血ペルシュロン馬の生産牧場としては、家畜改良センター十勝牧場がよく知られておりますが。民間の個人生産者さんにも、純血ペルシュロンの生産をなさっている方が少なからずおります。クマモトヨカバイの血統表にも、トウカイシンザンとその父ジーム(80戦6勝,重賞1勝)、ランタロー(不出走)、シンカザン。民間で生産され、種牡馬となった純血ペルシュロン馬の名前が多く見られます。
北海道の個人生産者の手で生産されたシンザン竜と新梅姫が熊本に渡って繁殖生活を送り、その産駒であるクマモトヨカバイが北海道に渡ってばんえい競馬で活躍している。非常にロマンのある話ではないかと思います。

もちろん「物語」という以外でも、このような流れは好ましいと個人的に感じています。近年、農用馬(ばん馬)の生産頭数や生産者戸数の減少傾向、特定種雄馬への依存度上昇等の影響で、農用馬の血の偏りが懸念されているところです。血の偏りを防ぐためには、生産頭数の増加は当然ですが、より多くの地域で生産されること、繁殖馬の流動性が高まることも重要だと考えます。クマモトヨカバイが活躍することによって、より多くの熊本県産馬が競走馬を目指すようになる。更には、九州のより広い地域で農用馬生産が行われ、ばんえい競馬を目指すようになれば、ばんえい競馬の将来はもっと面白くなるんじゃないか。九州でばんえい競馬の認知度がもっと上がれば、九州でもばん馬大会(草ばん馬)が開かれるかもしれない。
後半は妄想含みですがw クマモトヨカバイが今後更に活躍し、将来的には繁殖馬として民間ペルシュロン主体の血統を繋いでもらえるとうれしいなあ、と思っています。

| | Comments (0)

September 30, 2020

雑種強勢

「雑種強勢」という言葉をご存知でしょうか?
小学館発行「日本大百科全書(ニッポニカ)」には以下の通り記載されております。

遺伝的に異なる両親の間に生じた雑種に現れる、生育、生存力、繁殖力などの優れた性質をいい、ヘテローシスheterosisともよばれる。自殖劣性の逆の現象である。すべての雑種に現れる現象ではなく、両親の組合せによってその程度が異なる。一般に同一種内の遠縁のものの間の組合せほど雑種強勢が強く現れるが、あまり遠縁のものはかえって生育の不良な雑種弱勢を示すことがある。 雑種強勢は、雑種性の程度と深く関係しており、雑種第一代(F1)にもっとも著しく現れ、以下、雑種世代が進むにしたがってしだいに強勢の程度が減少する。

我々の生活に身近な例を上げれば
・交雑牛は肉質が良くて美味しい
・イヌのミックス(雑種)は長生きする
というやつです。

この雑種強勢、ウマの生産でも利用されている現象です。家畜改良センターのサイトにも説明があります。

それでは、と。実際の競走馬の血統を見てみましょう。
F1(純血種×純血種)の活躍馬といえば、コーネルトップ(139戦31勝,重賞8勝)が真っ先に上げられるでしょうか(純血ベルジアン×純血ペルシュロン)。

Cornel

そして。雑種化が進んだ血統馬に純血種を交配すると雑種強勢の効果が強く現れる、という例ではばんえい競馬史上に残る名種牡馬マツノコトブキとその全兄ハヤホマレ(154戦41勝,重賞12勝)。純血ペルシュロン×半血(雑種)馬。

Matsu

そして、マルゼンストロングホースやジアンデユマレイが日本の半血種牝馬と交配して大成功した事例や、反対に輸入ベルジアン牝馬が活躍馬(ニシキダイジンとかキタノビッグエースユミタロウ)をたくさん出した事例なんかもこれに合致するわけです。

 

また、雑種強勢ですが。前述ニッポニカの説明や豚の事例によると繁殖力でも優れた性質が現れるといいます。
純血種×純血種の名繁殖牝馬といえばミハル(ウンカイアンローズの母)やサホロクイン(サカノタイソンの母)が代表格。

Miharu Sahoro

純血種牡馬×その血を持たない半血種牝馬でいえばトツカワ(ダイヤテンリユウニセコクインヨウテイクインの母)やアサヒシヤルダン(スーパーペガサスの母)。

Totsukawa Asahi
雑種強勢がばん馬の改良に大きな役割を果たしてきたというのがよくわかろうかと思います(と同時に、ベルジアン種の導入が昭和後期~平成初期の馬産に大きな影響を与えたことも)。

 

ただ。これが時代が経るごとに様子が変わっておりまして。
かつて、農用馬の生産現場では「競走馬として顕著な成績を残した馬が種牡馬となる」ことは稀で、種牡馬は種牡馬となるべく育てられ(輸入され)た馬が種牡馬となっておりました。これらの中には多数の純血馬がいたわけで、雑種強勢の効果が得られやすい状況だったわけです。
それが昭和末期からは競走馬が種牡馬になる数が増加、現在では競走馬としてデビューする馬のほとんどの父親は競走経歴を持つ馬となっています。
そして、競走経歴馬は品種改良の結果どんどん大型化が進んでおり、純血種の繁殖馬は体格面で見劣りしてしまっております。
結果として、現在ばんえい競馬で走っている馬の血統は雑種化が進んだ繁殖馬同士の配合が主流になってきておりますし、今後もこの傾向は加速するだろうと思われます。

さてさてそんな中。令和の世に登場したのがアルジャンノオー。雑種化の進んだ競走経歴種牡馬×家畜改良センター産まれの純血ペルシュロンという掛け合わせ。雑種強勢を活かした配合です。

 

Aljan

雑種強勢がばん馬の改良に大きな役割を果たしていることを再認識するとともに、純血種繁殖馬の大切さ、純血馬を生産している家畜改良センター十勝牧場がばん馬の品種改良を下支えしているという事実を再認識した次第です。

| | Comments (0)